みなさんこんにちは。プレゼンテーションデザイナーの吉藤です。
今回はPowerPointの事例紹介をご覧に入れたいと思います。こちらは当ブログでたびたび登場しているXTREME-D Inc.のプレゼンテーション。2017年9月に、柴田CEOが ICC KYOTO 2017 カタパルト・グランプリにて登壇された際のものです。ICCというのは日本最大級のイノベーションカンファレンス。各スタートアップの代表が第一線で活躍する経営者・投資家・プロフェッショナルといった審査員の前でプレゼンテーションを行う大舞台です。
当日の実際の柴田CEOのプレゼンテーションの様子(ICCの公式サイトでも紹介されています)と、プレゼンテーションスクリーンだけにした動画を並べてみました。
* 社名・会社情報は2017年9月時点のものとなります
今回のこのプレゼンデータはPowerPointで制作しました。この制作背景、ちょっとおもしろいので詳細をお見せしていこうと思います。
■ 制作期間、2日!でつくるモーション
このプレゼン、柴田CEOが元データを作り吉藤がそれをブラッシュアップする、という工程で進めました。当時の時間軸を言うと、9/7日の夕方がプレゼン本番。そして作業開始は9/5のお昼過ぎです。実質48時間ほど。もちろん行き当たりばったりなどではなくて、事前にこの日程を予定してスタンバイしています。
元データは以前から使っていたパワポデータを随時増補してきたものなので、情報が詰まっているスライドもあれば、まだブランク、というスライドもあります。また、このテンプレートそのものも以前に僕自身が作ったものなのですが、この当時ですこし見た目に古さを感じるようになっていました。そこで、今回のプレゼンテーションの制作要件はこのように。
- デザインのリニューアルと、新旧とり混ざったスライドの全体統一
- 専門的な内容ではなく、スパコンを初めて知る人にもわかりやすい内容になるように
元データには、このように各スライドにリクエストコメントがついているので、それぞれの要素を一旦分解して、モーションがつくことを考えてデザインを再構築しています。
通常のプレゼン制作では ①PPT検証・要素分解 → ②デザイン提案 → ③提案内容確認 → ④フィードバック → ⑤制作 → ⑥仕上がり確認 → ⑦修正反映 という工程を踏むのですが、今回は時間が限られるため①~⑤までを一気にやっています。
このスライドの表現もこんなふうに変更しています。四角に文字だけの表現よりも、金額をグラフ化して動かすことで視覚的に比較がしやすくなるようにしました。
そしてこちらはプレゼンの最後の「パイプライン」「蛇口」というイメージを全体のデザインにあわせて表現。細かい部分ですが、パイプにあるメーターも動いています。
■ モーションの実際
動きはすべてPowerPointで作っており、実際の設定画面はこのように。スライドによっては100件近いアニメーションを設定しています。各アニメーションのスピードも細かく調整してあり、細かいところだと百分の一秒単位(!)で設定を行っています。
こういったアニメーションはもちろんAdobe After Effectsなどを使えばもっとスマートにできるのですが、ここで大事なのは「プレゼンターのPCで動くPowerPointである」というところ。
たとえば、どれだけ細かくアニメーションを設定していたとしても、プレゼンター側で文字をすぐに書き換えることができます。もしこれがAfter Effectsであれば、たとえ1文字の修正であっても一度こちらに連絡してもらって書き換えを行って、さらにレンダリング処理を行い待ち時間が数十分~数時間、、など。時間が読めないリスクがつきまといます。
プレゼンテーションの現場では、PowerPointを使うことでの「すぐに直せる」「待ち時間が不要」というのは大きな大きなメリットです。
■ 修正は本番直前のギリギリまで
実際、当日会場入りしたあとでも柴田CEOはプレゼン本番直前のギリギリの最後のタイミングまで修正をされていますし、僕もネット経由で本番の数十分前までアニメーションの微調整に対応していました。このようにアニメーション設定を複雑にした場合はプレゼンター側ではどうしても直しにくくなっているため、デザイナー側で最後までサポートしています。(のはずなのですが柴田CEOはいつもこのアニメーションを解析してご自身で直してしまいますが。。こういう方は稀です)。この「直前まで手を加えている」というのは、「作業時間が足りなくて最後の最後まで作業していた」ということではありません。データとしてはもうできているのですが、何度も何度もプレゼンのリハとイメージトレーニングを重ねていただく中で、内容や表現、そしてプレゼン時に動かしづらい箇所などをブラッシュアップすることで、「プレゼンターが話をした時のプレゼン総体の完成度を高めている」ということになるかと思います。
というのも、このカタパルトグランプリでは一人のプレゼンターの持ち時間は12分間。話せなかったからと言って延長は許されません。その中でプレゼンターとプレゼンデータをシンクロさせて、過不足なくきちんと聞き手に伝わるように話をするためには、やはり数限りないシミュレーションが不可欠です。
こうしたプロセスを経て制作したPowerPointデータを使ってプレゼンしていただいたのが、最初の動画。途中を飛ばすこともなく、時間が余ることもなく、自然な流れで時間ぴったりに終わっていますが、これがどれだけ難しいかはプレゼンされる方であればご想像いただけるかと思います。
以上、PowerPointによる制作事例をご覧いただきました。なかなか自分以外の誰かのプレゼンの準備の様子を目にする機会というのは少ないものですが、こうしたプレゼン制作の裏側を知っていただいて、いつもとはちょっと違う視点でプレゼンを見ていただくのもプレゼンスキルのアップにつながるのではないかと思います。
ところで、このXTREME-D Inc.は、来週6月25日~27日にドイツ フランクフルトで開催されるスーパーコンピューティングの国際学会『ISC2018』に出展いたします。
この出展ブースやパネルのデザインも僕が担当しています。こちらもぜひご注目ください!