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校長先生がPreziでプレゼン? 東海北陸連合小学校校長会

2018年1月1日 - Presentation
校長先生がPreziでプレゼン? 東海北陸連合小学校校長会
みなさんこんにちは。プレゼンテーションデザイナーの吉藤です。
今日はPreziの事例紹介を書いてみたいと思います。
 
このお仕事は、いろんな意味で僕にとって驚きのたくさんあるお仕事でした。そのひとつが、”最長記録”。なにが最長かというと、”依頼していただいてから本番までの期間”。なんと、実に2年がかりでお手伝いさせていただたプレゼンです。そんな驚きに満ちたプレゼン制作の裏側などをご紹介いたします。
 
 

■ 2年後のプレゼン?

僕がこのPrezi制作のお話をご相談いただいたのは、2015年の秋。お問い合わせをいただいたメールには、「2017の10月のプレゼン」とありました。さすがに間違いだろう、と思い、僕は返信で「プレゼンの実施は2016年の10月でしょうか?」と書きました(それにしたって一年近くあるので、それでも驚きなのですが)。するとお返事にはなんと、「いえ、2年後、2017年の10月で間違いありません」とのお返事。このPrezi制作はこんな驚きから始まりました。
 

■ 校長先生のプレゼン

そしてもうひとつの驚きが、このご依頼をしてくださったのが愛知県の小学校の校長先生であり、このプレゼンを利用されるのが「東海・北陸地区連合小学校長会教育研究愛知大会」という公式の舞台だったことです。お話をお聞きしたところ、これは年に一度、東海・北陸地区の小学校の校長先生ばかり1300人が一同に会し、小学校教育についての研究成果の報告や研修を行うための非常に大規模な研究会とのこと。ご依頼をしてくださった豊橋市立吉田方小学校の鈴木校長は、この平成29年度の研究部長として、大会の最初に行う大会趣旨説明を行うためのPreziを制作したい、というお話でした。
校長先生によるプレゼン、しかも校長会という公式な場。Preziのように新しい表現をするツールがこうした場で使われるというのはとてもセンセーショナルだったと思っています。
 
2年間という準備期間を設けてご連絡をいただいたのも、教育の場ではどうしても手続きや承認などに時間を要する、というご配慮から出たものでした。実際に制作を進めていくとたしかに2年間という期間はちょうどよいくらいでしたし、またそれ以上に、プレゼンの準備・練習をしっかりと行って臨む、という鈴木校長の姿勢がこの準備期間に反映されていたと感じます。

 

■ “新しく校長先生になる人にこそ、届けたい”

今回のご依頼の3つめの驚きが、プレゼンの内容です。実は最初にメールをいただいた段階で、校長先生のプレゼンということで「これは非常におカタいプレゼンの内容になるのかな」と勝手に想像をしてしまっていました。。いや、これはとても失礼なことなのですが、僕にとって校長先生というのは「遠くの方にいる偉い人」だったので。ところが、これは鈴木校長とお話する中でいい意味で裏切られました。
 
Skypeで鈴木校長とお打ち合わせをさせていただいたのですが、あれ、校長先生ってこんなに柔軟な考え方をしていてよいのだったっけ・・というのが最初の印象です。それくらい、鈴木校長が話される内容は気さくで柔軟なもので、言ってしまえば、企業のCEOとお話をしているような錯覚に陥りました。
 
そこでお伺いした内容は、「校長先生」というのは小学校教育という場においてリーダーシップを発揮するわけだけれども、校長先生という立場上どうしても非常に大きな発言権を持ってしまうし、そうした校長先生の雰囲気、そして職員室の雰囲気で学校の雰囲気というのは決まってしまう。子どもたちの教育をしていく上では、従来のようなトップダウン型のリーダーシップだけではなく、”支援型リーダーシップ” に代表されるような手法も積極的に用いていくことで、職員の先生たちが自由に動きやすくする環境を整えてあげることこそがこれからの管理職の役割ではないか、というのが今回の趣意でした。
 
これは、ビジネスの現場で現代のリーダーシップを真剣に考える方にとっても非常に身近な話題ではないかと思います。こんなふうに、「校長先生のプレゼン」という入口で僕が抱いていた先入観は、大きく打ち砕かれました。なによりも、打ち合わせの最後に鈴木校長がおっしゃった一言がとても印象的で素敵でした。
 
「こういった内容は、あるいはビジネスの中ではごくごく普通のことなのかもしれないですが、教育分野は立ち遅れているんです。そうしたところを少しでも意識を変えていかないといけない。古い考えの人には届かないかもしれないけど、新しく校長先生になる人にこそ届けたいんです。」
 
僕もぜひそうあってほしいと思い、Prezi制作をお引き受けしました。
 

■ Preziでのビジュアライズ

お話をお伺いする中で、具体的なPrezi制作の要件が固まってきました。上記のようなプレゼンの意図は、言葉だけで伝えようとしてもなかなかイメージが分かりにくいので、視覚化して表現していきたい。そしてまた、この表現にはイメージが次々に広がっていくように構成できるPreziを使うのが一番良いのではないかと考えている、というのが鈴木校長からのご希望。ポイントをまとめると、大きく以下の3点です。
  • 大会の最初に全体に向けて行うプレゼンであるので、詳細な情報解説ではなく、大きな到達点をイメージできるような、内容を視覚化したものに
  • 従来の講演スライドのように見慣れたものではなく、新しく、聞き手を動かすものを
  • イメージを重視した構成で、言葉に重ねるようにプレゼンができるようなスクリーンを
制作にあたって、鈴木校長は最初の段階でドラフト版の読み上げ原稿をご用意いただいていたので、僕はこの原稿と、ヒアリングさせていただいた内容をあわせてデザインを作っていきました。それでは、実際に完成したPreziをご覧いただきましょう。
 

こちらが動画バージョン。

こちらはPreziのオリジナルバージョンです。

デザインとしては、今回のプレゼン内容のキーである、”校長のリーダーシップと、職員の先生たちとの関係性” がイメージしやすいようにまとめました。こうした内容や、学校で学ぶ子どもたちの未来、というテーマは、Preziの浮遊感の動きと親和性が高いですね。

 

■ プレゼンテーション本番が終わって

さて、東海・北陸地区連合小学校長会教育研究愛知大の本番は、2017年10月5日、6日。後日、鈴木校長からは、非常に大きな反響があった、とうれしいご連絡をいただきました。ただしこれはPreziやデザインの力ではなく、これだけの時間をかけて綿密に準備と練習をされた鈴木校長のプレゼン力。いつも言っていますが、プレゼンの完成度を高めるのは、事前の準備と練習以外にはありえません。
 
またこのプレゼンの背景には、鈴木校長の発案に対して全面的に賛成してくださった大会実行委員会および愛知県小中学校長会のご理解、そして資金援助があったとお聞きしました。校長先生のさらに上のレイヤー、というのは普通はあまり考えないものですが、今回はそうした方々のしっかりとした理解と協力があった結果とのこと。まさにこの大会の趣旨である「支援型リーダーシップ」が実践されていた、ということを後になって理解しました。
 
このことに気がつかなかった自分がなんとも情けないのですが、それくらい、僕は2年間の間「デザイン」という自分の仕事だけにしっかりとフォーカスさせていただけたプロジェクトでした。関係者のみなさまに改めて感謝するとともに、教育関係だけでなく日本のいろんな企業・組織の方々にも参考になるのではないかと思い、2018年最初の記事とさせていただきました。
 
プレゼンの実施後には、当日参加された多くの先生方からの感嘆のお声や問い合わせ、更には後日の再演リクエストというこれまでにない反応などもあったとのこと。このプレゼンを見ていただいた教育関係の方々の刺激になっていたら、とてもうれしいなと思います。