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PowerPoint事例紹介:FIN/SUM x REG/SUM 2018

2019年1月3日 - Presentation
PowerPoint事例紹介:FIN/SUM x REG/SUM 2018

今日ご紹介するのはPowerPointの制作事例。今回は、2018年9月25日から27日にかけて東京丸の内で開催されたグローバルスタートアップイベント『FIN/SUM x REG/SUM 2018』において、Institution for a Global Society株式会社の福原正大氏が登壇された際のプレゼンテーションデータです。

このFIN/SUM x REG/SUM 2018は、日本経済新聞社と金融庁がフィンテックとレグテックをテーマとして企画した国際シンポジウムで、国内外から多くのスピーカーが集まる大規模なものでした。

 

■ 制作依頼~納品までのスケジュール

もともとこのお話をいただいたのは、9月12日の夕方。そもそも福原氏ご自身もこの日に依頼を受けられたとのことで、その後すぐにスケジュールのご相談という形でご連絡をいただきました。

– 「Fintechで日本を変える」というテーマの、18分間のプレゼンテーションです。
– おぉぉ。
– この世界観を表現できるのは吉藤さんしかいないです。
– おぉぉ(うれしい)。
– 本番2週間後(9/26)です。
– おぉぉ!?
  …あ、いや前回は5日だったし福原さんのプレゼンなら作れます。

ということで。スケジュール的には非常にタイトでしたが、制作を担当させたいただくことにしました。制作期間については以前の記事でも同じような感じでご紹介していますが、過去に何度かプレゼン制作を担当させていただいていて、この方のプレゼンなら作れる!という点と、この方なら作ったプレゼンをうまく使っていただける!という両方の確信があってこそ、のスケジュールです。

■ プレゼンデザインは、”何もない” ところから

このプレゼンは、未来の日本、そして未来の世界について語るプレゼンテーション。福原氏からのリクエストの筆頭にあがっていたのが、「世界観を感じられるものに」というものでした。

まずは福原氏にまとめていただいたWordの原稿をベースに1時間ほどお打ち合わせをさせていただき、その後は5日ほどを制作にあてました。こちらが最初のWordの原稿。既にプレゼンの流れをしっかり組み立てていただいています。ただこの段階ではデザインについてはまだ何も定まっていない状態。僕の仕事はここからです。

ところで、プレゼンのお仕事をお引き受けする場合には主に分けて3通りあって、
  ① ドラフトのPPTなどが既に存在するケース
  ② 文章で最初の構想をいただくケース(今回はこちら)
  ③ 打ち合わせ時の言葉だけでデータ的なものは何も存在しないケース
というふうに分かれます。どのケースであっても、いったんすべてをゼロに引き戻してからプレゼンテーションを構築しなおすのがプレゼンテーションデザイナーのお仕事なのかな、と思います。たとえば③のようなケースだと、わかりやすく “何もない” 状態から話を聞いて一足飛びに “プレゼン” という形にしているように見えますが、①や②であっても同じように一度すべてを分解して再構築する、ということをしています。
(ちょっと話がずれますが、世界中のPrezi Expert資格を持つ企業・デザイナーはどこも共通してこのフローができます)。

また、今回は制作の時間が限られるため、最初にこんなやり取りがありました。

– 時間がないので、デザインは僕の感覚全開でやっちゃっていいですか?
– ええ、やっちゃってください。

通常、時間があるプロジェクトではデザイン案のアイディアボードを出して確認していただいて、という工程を踏むことも多くありますが、その工程を飛ばしてもいいといっていただける分だけ信頼してもらっている、というのはプレゼン屋としてはとても光栄なことです。この期待に応えるためにも徹底的に考え尽くしました。

■ Fintechでつくる未来の世界観を表現する

それでは、まずは今回の完成品をご紹介します(本番で使用された重要な数値データなどは外しています)。アプリはグラフィックの描画と画像処理にIllustratorとPhotoshopを使い、PowerPointで制作しています。

今回のプレゼンテーションのデザイン上のポイントとしては、

・イエロー×ブラック×ホワイトのカラーセット
これは福原氏のInstitution for a Global Society株式会社様のコーポレートカラーがイエローという点と、イエロー×ブラックで「現状への警鐘」、イエロー×ホワイトで「未来への希望」を表しています。なので、過去や現在の話のときはブラックの割合が多く、未来の話になるときはホワイトの割合が増えるデザインになっています。

・「斜め」と「水平」というのが裏テーマ
このプレゼンの中で大きなテーマとなるのが「バイアスがかかって世界が分断されている」という視点です。「BIAS」は、もともとフランス語の「傾き」から来ているので、バイアスの話や現在の世界の話をする際には画面に斜めのラインが入り、デザイン上でも画面が “分断” されているように。一方で未来の話をする部分では、ラインは水平で、画面そのものが安定感のあるデザインになるようにして、その対比が生まれるようにしています。

・世界観が感じられる画像処理
プレゼンテーションの中での世界観を統一するために、写真はそのまま使用するのではなく、モノクロ化してドット処理を施し、アニメーションと写真の中間に位置するような仕上がりに。リアルよりも聞き手の想像力が働く余地を残したデザインとしました。デザインは “ビジネス” なイメージに寄せて、ソフィスティケートされた印象を受けるようにまとめています。また画面はできるだけ流れるように遷移することで「世界が進んでいく」様子を画面のフローでも感じてもらえるように、という工夫も入れました。

 

■ こだわりのPowerPoint設計

今回のPowerPointは設計上もかなり凝ったものになっています。たとえば運営側からはデータに関するこんな指定がありました。

・PowerPoint 2013/2016
・日本語フォント:MSゴシック、MS Pゴシック、MS明朝、MS P明朝
・英語フォント:Century、Century Gothic

ですがこの指定フォントでは決して美しいスクリーンが作れないと感じたので、より力強く、また優雅に世界観を描けるようFelix Titlingとヒラギノを選択。フォント指定に抵触しないよう、PowerPoint上で一度テキストで記述して位置確認をした後で、すべてを画像化して再配置するという工程を入れています。なので、テキストボックスは一文字も入っておらず、すべてが画像だけでできているという不思議な構造になっています。

そして今回最も凝ったアニメーションがこの部分。テクノロジーが発展していく各フェーズの変化をどうやったら表せるかな、と考えた結果、こんなグラフィックとアニメーション表現を使ってみました。この部分で使用しているスライドは5スライド。画面切り替えの「プッシュ」と各スライドのアニメーションの出現順序を組み合わせて、画面が流れていくように見せています。

 

最終的に完成したデータは、PowerPointだけを納品するのではなく、こういうスクリプトデータも併せて納品しています。スクリーンとそこで話していただく内容、デザインやアニメーションと話の内容がうまくリンクするように覚書を書き込んでいます。

こんなふうにして作ったPowerPointデータ、実は当日の朝のギリギリまで修正を入れていましたが、無事本番で使用していただくことができました。

以上、FIN/SUM x REG/SUM 2018での福原正大氏のPowerPointデータ制作の裏側をご紹介いたしました。みなさまのプレゼン制作の参考になれば幸いです。